潜在精巣について
こんばんは。獣医師の西井です。
今回も去勢に関係した病気についてご説明します。
潜在精巣(停滞精巣)について
オスのわんちゃん・ねこちゃんの精巣はもともとお腹の中にあり、生後2ヵ月までに陰嚢内に降りてきます。しかし、生後2ヵ月を過ぎても陰嚢内に精巣が降りてこない状態を潜在精巣といいます。通常、片側の精巣が降りてこないことが多いですが、両方の精巣がおりてこないこともあります。陰嚢内に降りてきていない精巣は、お腹の中(腹腔内)または鼠径部にあり、片側の場合は鼠径部に、両側の場合は腹腔内にあることが多いと報告されています。
【症状】
すぐに生じる症状はありません。しかし、潜在精巣は高い確率で精巣腫瘍になると報告されているので、今後、精巣腫瘍に関連した症状が出てくることがあります。(詳しくは精巣腫瘍のブログをご参照ください)
【診断】
触診で陰嚢に精巣がないこと確認し、鼠径部にあるのか腹腔内にあるのか超音波検査やCT検査で確かめます。鼠径部にある場合は、触診にて確認できることもありますが、降りてきていない精巣は正常の精巣より小さいことが多く触診できないことがあります。
【治療】
治療方法は去勢手術しかありません。降りてきていない精巣の場所により手術の方法が変わります。鼠径部にある場合は、皮膚の切開により摘出できますが、腹腔内にある場合はお腹を開ける必要があるので大変です。
【予防】
潜在精巣になるのを予防することはできません。しかし、潜在精巣は親からの遺伝により生じると報告されているので、潜在精巣のわんちゃん・ねこちゃんを繁殖に用いないことにより潜在精巣を生じにくくすることができます。
【ほっておくと…?】
潜在精巣は、正常に精巣が陰嚢内にある仔に比べ、精巣腫瘍の発生率が13倍になると報告されています。腫瘍化すると他の症状を示すようになるので、そうなる前に去勢手術をすることをおすすめします。