猫免疫不全ウイルス(FIV)について
こんばんは。獣医師の西井です。
今回はねこちゃんのウイルス病についてご説明します。
猫免疫不全ウイルス(FIV)について
ねこちゃんの免疫不全ウイルス(FIV : feline immunodeficiency virus)は、ヒトの免疫不全ウイルス(HIV)で生じる後天性免疫不全症候群に似た免疫不全状態になります。感染はおもに、FIVに感染しているねこちゃんに咬まれることにより感染します。また、精液中にも存在するので、母猫から仔猫への感染源にもなります。高齢、雄猫、お外に出かけるねこちゃんがもっとも多く感染していると報告されています。
【症状】
FIVによる症状は、ウイルスによる直接的な影響と免疫不全による二次感染による影響があります。初期のFIVでは、発熱・リンパ節の腫大で、それに伴い食欲不振・体重減少・沈うつがみられます。ウイルスによる直接的な影響は、小腸性の下痢、非再生貧血、血小板減少症、好中球減少症、リンパ節腫大、前眼房の炎症、前部ぶどう膜炎、糸球体腎炎、腎機能障害、高グロブリン血症が報告されており、痴呆や逃げ隠れ、性格の変化、不自然な排泄も多いです。また、FIVに感染しているねこちゃんはリンパ腫になる危険性が高いです。免疫不全による二次感染(日和見感染)では、口内炎や皮膚炎、呼吸器症状などをおこします。
【診断】
診断は、血液検査で行います。ねこちゃんでは、FIVと猫白血病ウイルス(FelV)にかかっているかどうかを同時に判定することができるキットがあるので、このキットを用いると、感染の有無を確認できます。しかし、母猫が感染している場合は、初乳にFIVに対する抗体が含まれており、体の中に数カ月は残るので、仔猫で感染が疑われる場合は、6カ月齢まで感染陽性結果が続く場合に、感染していると判断します。
【治療】
現在のところFIVを完全に治療する(根治)治療法は見つかっていません。FIVのねこちゃんが必ずしも免疫不全の状態になるわけではなく、そのまま何もなく一生を過ごす場合もあります。FIVにより何らかの症状が出てきた場合は、その症状に合わせた治療(対症療法)をすることになります。ねこちゃんの免疫力を高めるためにインターフェロンのような免疫賊活剤やウイルスの増殖を抑える目的で抗ウイルス薬(アジドチミジン)が使用されることもあります。
【予防】
けんかを避けるために室内で飼い、新しく別のねこちゃんを同居させるときはFIVの検査を行うことで予防効果を高められます。
【ほっておくと…?】
無症状の場合は、特別治療する必要はありませんが、症状がでてくると命にかかわるものから適切な治療により快適な生活に戻してあげることができる場合があります。どうしよう?と迷ったらお近くの動物病院にご相談ください。